憧れのJMT(ジョン・ミューア・トレイル)をゆく
山行情報
日時:2022/08/01 ~ 2022/08/04 天候:8月1日 曇り時々雨、夕方雷雨、8月2日 晴れ、夕方雷雨、8月3日 晴れ、夕方雷雨、8月4日 晴れのち昼から雨ランク:C-C-8:30 参加:4名
山行担当:CL3205 SL3271
記録担当:文責:3205、3271、3561、3630 写真:3205、3630、3271、3561
コースタイム
第1日目:アグニュー・メドゥー ~ ガーネットレイク 6h20m
第2日目:ガーネットレイク ~ マリーレイクトレイル分岐 8h30m
第3日目:マリーレイクトレイル分岐 ~ キャニオン 8h30m
第4日目:キャニオン ~ トゥオルミ・メドゥー 5h20m
山行記
準備編
40周年記念山行でアメリカのJMTを出そうと思っているけれど、下見に行かないか? というお誘いを頂いたのは昨年の秋であった。ロングトレイルの聖地、世界で一番人気のあるトレイル。様々に形容されるJMTは、カルフォルニア州東部を貫くシエラネバダ山脈にあるロングトレイルだ。憧れのJMTに行けるかも!高揚する気持ちを抑えながら準備にとりかかる。
一番大きな仕事は入山許可証を取ることだ。JMTでは登山口ごとに一日の入山人数が限られ、その許可を得るためには半年前からパソコンで先着順の許可証を取るしかない。
私達もメンバー二人が真夜中(時差のため)頑張って、AA007というかねてより希望していた登山口の許可を得ることができた。私たちのトレイルは8/1~8/6の5泊6日と決まった。
次に障壁となったのは、コロナだ。そろそろ航空券を取らなければという春頃、状況は不安定だった。しかし強い気持ちの4人は、チケットに保険をかけながらも予約を取った。
あとは、ホテルの手配、交通手段を調べる、などを着々と進め、当日を迎えた。
7/31成田空港を出発、サンフランシスコ空港を経て、ビショップ空港に降り立つ。余りの小ささと余りの強い日差しに驚く。調べておいたバスは土日のためお休みで、タクシーを使って、マンモスレイクスの町まで行く。値段は10倍になってしまったが、時間は随分節約できたので、良しとしよう。
ホテルに荷物を置き、早速入山許可証を受け取りに、ウエルカムセンターに行く、受け取れた時には皆、本当にほっとした。これが無くては歩けないのだから。あとは、クマ缶を買う事が残っている。JMTでは、食物や化粧品などの匂いのするものはベアーキャニスターという入れ物に入れる事が決まりだ。
荷物を詰め直し膨らんだザックを見ながら、これを背負って歩けるのかしらという不安と、見た事の無い景色への期待からなかなか寝付けない夜だった。 (文責:3561)
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- ビショップ空港に降り立つ
- 驚きのバゲージクレイム 車から人力で置いていく
- マンモスレイクスの街中を走る無料のトローリーバス 帰るころには自由に乗れるようになっていた
- ウエルカムセンターでパーミットをゲット 思わず笑みがこぼれる
- 山が呼んでるって
- ベアーキャニスター これを2個使用 4人分の食料などを入れた
- クマ缶に入れる食べ物 一人分
1日目(いよいよJMTへ!!)
早朝、マンモスレイクのモーテルから登山口へのバスに乗車する。
前日に許可証を受け取り、ベアキャニスターも購入済。バス停も前日下見をしておいたので、首尾よく早いバスに乗車できた。バスは軽装の観光客、大きなザックの登山者、犬達も口輪をして乗ってくる。若いご夫婦が登山装備に加え10か月位の赤ちゃんを連れて乗車してきた。背負っているのはママの方。赤ちゃんを連れてロングトレイルかあ。凄い。
バスを降りて登山口で準備。針葉樹の強い匂いを胸いっぱいに吸い込むと、これまでの数々の準備が大変だったことを思い出し涙が出てきた。
いよいよ長年夢見て来たJMTへ出発だ。日本では見たことのない巨大な針葉樹、花、荷揚げ用のラバ達、大きな松ぼっくりに目を見張る。岩や滝の様相は、どこかで見たような。あ、ディズニーランドの模型の岩にそっくりだ。天候は曇り、時々小雨。湿度が低いためか涼しくレインジャケットを着てもそう暑くはないが、この日の目標地のガーネットレイク付近で空模様が怪しくなり雷が鳴り始め、あわててテントを張れる場所を探す。
食事は各自でフリーズドライやパスタ。湖の水を浄水器に通し、明日の飲料水にする。明朝も夕方の天候の崩れを予想し早朝の出発を確認し、就寝した。 (文責:3271)
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- JMTにつながる登山口、アグニューメドウ
- 荷運びのロバが沢山
- 1泊以上は許可証が必要との注意書き
- ビッグサイズの松ボックリ
- ディズニーランドで見たような?
- 滝は湖の出口だった
- 山々のスケールの大きさにニッコリ
- JMTのルート上には数々の湖がありそこから流れるCreek(小川)も多数。ただし飲料には浄水が 必要
- 荷揚げの馬(らば?)達。先頭はカウボーイハットの女性
- よく整備されているトレイルだが、ラバ達の「落し物」がかなりたくさんあり。
- 北斜面に雪渓が残る。マンモス山か?
- シャドーレイク付近。小雨。
- 1日目のテント場
2日目(湖越の山々の絶景を楽しむ)
朝5時起床。昨日の雨が嘘のような雲一つない快晴。ガーネットレイクに映る大きな山々の絶景を味わいながら6:40am2日目をスタート。ガーネットレイクを回り込みながら進む。トレールは本当によく整備されていたが、九十九折りの一折一折が長く、距離を歩くので時間が掛かる。
ひと山超え、ルビーレイク、エメラルドレイクを超えてサウザンド・アイランドレイクに入る。ここも素晴らしい景色だった。トレールの周りを見ると、我々とは違ってボートや釣りといった湖岸のでのレジャーを楽しんでいる人が沢山いた。ただ、車で運べないところまでどうやって荷物を運んできたのかとの疑問が?ラバのおかげ?
サウザンド・アイランドレイクからのアイランドピークへの分岐を探しながら歩いていると偶然北海道から留学に来ている女性に遭遇。この女性も友人と2人で30日かけてJMTを完走する予定との事。これからのルートやトゥオルミなどのアドバイスを頂く。引き続き湖岸の道を進んでいたが、あまりに分岐点が現れないので見落としと考え、引き返し確認することに。GPS地図を再確認すると30分ほど行き過ぎていることが判明。元来た道を戻っているとスイカを持った女性に声を掛けて頂き、これを食べていきなさいと勧められる。この女性のご厚意とスイカの甘さが心に浸みました。また、丁度ここが分岐点だった為、重ねてのラッキーとなった。このおかげで間違ったことによるダメージが少し癒された。アメリカ人の優しさに触れられた良い経験となった。
再びアイランドパスに向けて沢沿いを進む。今日も昨日同様3時頃には雲が厚くなり始めたので、早めにテント場を決め、比較的平たいグランドに設営。
一安心して食事の準備を始め和んでいると、森の中から突然ハンサムなレンジャーが登場!来るかもとは聞いていたが、しっかりパーミットやベアーキャニスターの所持を確認された。調べられることでの緊張感からこの様子を写真を撮らなかったことが残念であった。
その後、食事を終える頃に突然の雷雨がやってきたため、急いでテントに逃げ込む事に。雷雨はすぐには止まず、なかなかの雨量で、テントの淵まで雨が上がってきて、テントがゴムボート状態になってしまった。外を確認すると、周りの岩場からの水が全てこのテントの場所に集まってきているのが原因であった。何とか雨が少し収まってきた所でテントを移動し、濡れた部分を拭き取り、何とか寝られる状況に回復させることが出来た。平たい所は安全と思っていた事に反省。
夜は日本では見られないくらいの満天の星空が望めた。本当に慌ただしい一日が終わった。 (文責:3630)
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- 大迫力
- ルビーレイクの小橋を渡って2日目のスタート。晴れ上がった空に気分上々
- 長いツヅラ折りの道を一時間ほど登り一息入れる
- ガーネットレイの次のルビーレイクに到着
- エメラルドレイクを過ぎて小さな渡渉(?)するともうサウザンドレイクまで一息
- サウザンド・アイランドレイクからアイランドパスに向かう分岐までもうひと頑張り
- 湖岸のトレイルは続く
- サウザンド・アイランドレイクの湖畔で、北海道から留学している日本の方にばったり
- アイランドパスへの分岐を見落としていたことに気付き、道を引き返した。ようやく分岐まで来たところで、偶然いた写真の女性からスイカやリンゴをごちそうになる。疲れて乾いた体に、おいしさが染み渡った。
- 突然の雷雨が降り始めテントがあったところが池に!
3日目(ドナヒューパス越え)
昨日の雨で濡れて重くなったテントを担いで出発。今日は今回のトレイルの最高地点ドナヒューパス(3375m)を越える。これからの行程を考えると行けるところまで行こうという計画だ。
岩々した道を登っていく、緩やかな九十九折りになっているので見た目程には歩きにくくないが時間はかかる。
そして今日のJMTは又全然違う表情を見せてくれる。日差しが強くなってきたので、岩場に咲く可憐な花の近くで、テントやシュラフを乾かす。空はどこまでも青く、広がる山々の佇まいにうっとりとする。
こつこつと歩みを進め、ドナヒューパスを越えると快適な下りだ。昨日もだが今日も、赤ちゃんを背負った一家(スーパーママと呼んでいた)と何度も遭遇する。スーパーママと機嫌のよいベビーと素敵なご主人は巨大な荷物を背負いながら、行きかう人達と談笑し軽やかに進む。アメリカ人の体力に脱帽といったところか。
右手に沢を見ながら、ほぼ平坦な小道を軽快に歩く。しかし14時付近、雲が湧いてきた。又雷か?速度を速めるが、空は怪しくなっていく一方。良い所があったらテントを張ろうとテン場を探す。日本のようにテント場は決められていないが、沢から何m、トイレ(自分で穴を掘る)からは何m、クマ缶からは何m離すなど厳しい規則がある。結局予定よりも早く切り上げテントを張る。そしてお決まりの雷が来た。この雷雨のせいで距離が稼げないね、などと愚痴を言いながら疲れた体を休めた。 (文責:3561)
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- モルゲンロートが美しい
- まるで槍ヶ岳
- 珍しい山容
- 可憐な花に癒される
- カワウソのような動物が
- 強烈な日差しが濡れたものをすぐ乾かしてくれる
- ドナヒューパスへ向かって歩く
- ドナヒューパス到着
- やったー!あとは下るだけ
- お疲れ様!
- ドナヒューパスを超えると、遠くに草原が見えてきた。
- 見る方向で景色が様変わり
- 壮大な景色にうっとり
- 氷河の名残り
- さっき見えていた草原に下りていく。
4日目(涙の途中下山)
朝靄に浮かぶテントが幻想的な朝。昨日びっしょり濡れたテントを少しは乾かし、テン場を後にする。今日はトゥオルミー・メドウ(TM)を通って、ヨセミテに向かう予定。非常に緩やかな山道をひたすら下る工程。トゥオルミー・メドウではもしかしたらビールにありつけるかもしれない。
のんびり歩いていると前からレンジャーのご夫婦に遭遇。パーミット、熊缶等のチェックを受ける。2日目に次いで2度目。しっかり入場者数を管理している事に感動。日本からコロナの中をわざわざ来ている事に感動してもらう。
そこで得た悲しい情報。「今日の午後から天気が大きく崩れ、明日も終日雨!」これはヨセミテの途中で2泊テントを張り、2日後にヨセミテに下りる最後の2日が大雨となるという事。レンジャーのアドバイスも受けて、エスケープする最後のチャンスである、TMで下山する事を全員で決定。寂しい様な、ちょっとホットしたような複雑な気持ちでTMを目指す。
TMはさすがの観光地。ハイカーに交じって多くの観光客にも出会う。TMからマンモスレイクへのバスを待つこと2時間。念願の(?)ビールを飲んでいると、あのスーパー親子と再会。彼らも悪天候予報の為、ヨセミテまで行く予定を変更してマンモスに戻るとの事。JMTでは全く電波が入らない中、気象情報を持たずにハイクを続け、結果、正しい(?)判断をして下山した事にホッとする。
2時間かけて再度マンモスレイクの町へ。3泊分のロッジを探してめでたくハイク終了。同じロッジにはTMのバスで一緒だった老夫婦とも遭遇。彼らもやはり悪天候で下山したそうな。 ここは気持ちを切り替えて、「あとはマンモスとサンフランシスコの観光!」と気持ちを切り替えた。でも最後の最後に気になるのは、やはり帰国前のPCR検査! (文責:3205)
【CL追記】
1年前から計画をスタートし、コロナ禍の中でもパーミット、航空券取得と徐々に気分を高めて、ついに実施できた、人生初の海外山行。4日間ではあったがパーミットが2分で「売り切れてしまう」理由を痛感した。峠を越えると見えてくる全く違う景色!これぞJMTの醍醐味。
写真をクリックするとスライドショーになります。
- 綺麗な沢 快適な道を行く
- 朝もやに浮かぶテント
- シュラフもしっかり干して、あと2泊のハイクに備える
- foot bridgeが渡渉の意味であることを知る
- こんななだらかな小道も
- なだらかな下りでTMを目指す。標高が低い為、今までの様な山岳景色はない
- レンジャーのご夫婦と記念撮影!
- 滑沢のような涼しげな流れ
- いよいよTMの観光地へ
- JMTともさようなら。本当はヨセミテバレー(27マイル)まで行くはずだったけど
- TMのバス停でスーパー親子と記念撮影