剱岳・立山三山縦走(剱沢雪渓・テント泊)

剱沢小屋直下。振り向くと、目がさめるような青空を背景に剱岳の雄姿が!

山行情報

日時:2024/09/03 ~ 2024/09/05 天候:晴れ/一時雨
ランク:C-C-9:00 参加:3名
山行担当:CL3840 SL3847
記録担当:文責:3840 写真:3840, 3847, 4036

コースタイム

1日目
黒部ダム7:53…13:24ハシゴ谷乗越13:44…15:20真砂沢ロッジテント場(泊)
2日目
泊地5:00…8:31剱沢キャンプ場9:14…9:56一服剱10:03…10:31前剱10:54…11:53剱岳12:31…13:18前剱13:42…14:11一服剱14:24…15:22剱沢キャンプ場(泊)
3日目
泊地5:07…6:27別山(北峰)6:42…8:14富士ノ折立8:37…8:56大汝山9:01…9:07雄山9:14…10:15一ノ越山荘10:26…10:56室堂

コースマップ

記録日:2024/09/03~2024/09/05
合計距離: 27736 m
最高点の標高: 2998 m
最低点の標高: 1257 m

山行記

はじめに

今年は会社のアニバーサリー休暇取得年。1週間の休みが取れる。でも子供は大きい。もう付きあってくれない。じゃあ、山に行こう。しかも普段の休みでは行けない長い行程で。で、南アの深いところをと考え、仲間と半年以上も前から構想を練り、準備や下調べもして来た。

ところが。よもやの台風襲来。そして、登山口までの道が何と通行止めに。う~ん、万事休すだ。でも、自然には抗えない。それに山は南アだけじゃない。で、仲間と急遽作戦会議。いくつかルートの選択肢があがった。そんな中、剱に行ってみたいとの声があがる。剱は数年前に行ったことがある。でも久しぶりに行ってみるか。とは言え、行くなら未踏の剣沢雪渓を使ったルートで、と提案。今回のルートとなった。



1日目

車に相乗りし扇沢まで行き、そこから関電電気バスで登山口となる黒部ダムへ。バスから降りるとそのまま人の流れに乗り、黒部ダムへ。雄大な景色が目に飛び込む。でも登山口が分からない。そうだ、他の観光客と違うのだ。ウロウロとあちこち歩きまわる。そんなハプニングもあったが、初日のテン場の真砂沢ロッジを目指す。

まずはダムから延びる川沿いを下る。歩き始めて暫くすると、「ここって下ノ廊下じゃない?」という声が。どうりでだ。風光明媚な黒部川渓谷の景色が目に飛び込む。でも、そんな歩きもつかの間。黒部峡谷に別れを告げ内蔵助谷に入ると、激登りの開始だ。しかも人の歩きが少ない道。整備が行き届いている訳ではない。テント装備が重く、疲労が徐々に溜まる。眺望もない。ペースも必然、落ちる。そんな中、ハシゴ谷乗越を過ぎると今度は激下りが。「なんでこんな所を歩いているのだろう。室堂から素直に上がれば」という声が頭をよぎる。

そんな歩きであったが、コースタイム1時間超の7時間で、漸く真砂沢ロッジに着く。さっそくテントを立て、一息入れる。ふと奥に目を向けると、テン場を整備している人の姿が。声をかけてみるとなんとネパールから来ていると。しかもエベレストのシェルパさん。その上、流暢な日本語を話す。一期一会の会話をしばし楽しみ、明日に備えてこの日は早めに就寝。



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2日目

薄暗い中テントを撤収し、今回の核心部、剱沢雪渓の歩きを開始。だが、時期的に雪渓はほぼ崩壊。山肌に付けられた夏道を歩く時間が長い。とは言え3ヶ所の雪渓渡りがある。歩くルートには目印あり、と小屋番さんから聞いてはいた。が、分かりにくい。一つひとつ目印を探し、滑りやすい雪渓の上を慎重に進む。まさに牛歩だ。でも見上げれば剱の雄姿が。と言いたいところだが、恥ずかしがり屋の剱さんはガスの中。そんな眺望の取れない歩きだが、時折吹く雪渓上のひんやりとした風に癒される。

そうこう格闘すること3時間半、漸く剱沢の上端にある剱沢小屋に出る。すると何とガスが晴れ、ダイナミックな剱の山容が目に飛び込む。剱沢へ裾野を広げるその容姿は言葉では言い尽くせない。絶景だ。まさかの展開に皆のテンションは爆上がり。ここまでの苦労が一瞬にして吹き飛ぶ。これだから山はやめられない。

時間はこの時点で8時半。テント場はすぐそこ。いざ剱を目指さんとパパっとテントを設営。軽身で発つ。足取りはまだ軽い。まず一服剱を登る。次に前剱。しかし急登の連続。徐々にペースが落ちる。そして剱の取り付きへ。昨日の激登り下りと、今日の剱沢雪渓の歩きの疲労を感じる。でも容赦なく鎖場、梯子が続く。岩稜歩きは実に面白い。そしてかの有名なカニのタテバイ。そこで先行者の老夫婦が通過に10分ほどを要す。しばし足を休める。テント場を発って3時間。剱の頂きに立つ。残念ながら再びガスに包まれるも、時折訪れる晴れ間に、上がって来た剣沢雪渓の谷筋が見える。「ここを上がって来たのか」と暫し感慨に耽る。

そして下り。カニのヨコバイを過ぎたあたりで一瞬、雨に降られる。岩が滑る。疲労の溜まった足に堪えるも、何とか無事テント場へ帰還。すぐさまビールで祝杯を挙げる。そして夕日のあたる剱を眺め歓談。テント泊ならではの至極の時間だ。



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3日目

朝、テントを撤収し終わるころ、周囲が明るくなる。雲ひとつない空の下、剱が赤く染まる。「山ってほんといいな」、と思わずにいられない時間だ。後ろ髪引かれる中、テント場を後にする。

歩きを進め、別山に登ると今度は立山の雄姿が目に飛び込む。遠くには後立山連峰の山塊も。遮るものが何ひとつない稜線上の歩きは格別だ。まさにビクトリーロード。まず立山三山の一つ、富士ノ折立を目指す。山頂直下の急登には苦労したが、歩き始めて3時間、到着だ。期せずしてガスがかかる。が、おかげで素晴らしいブロッケンを拝むことができた。

次に大汝山。立山最高峰だ。思わず岩に抱き着く。そして雄山へ。歩みを進める中、視線を落とすと室堂平の景色が目に映る。雄大なその景色にうっとり。雄山に至ると五色ヶ原の先に薬師の山容が。立山から薬師のルートは、いつかは踏破したい未踏のルートのひとつ。雄山では祈祷を受け、安全を祈願。700円。

そしていよいよ室堂へ下山。わんさかと下から人が上がって来る。さすがは室堂からの黄金ルート。もう一泊して大日三山を巡る予定であったが、午後から雨予報。下りて来たルートを振り返って見ると、すでにガスの中。無理せず今回はここで切り上げることに。山は逃げずだ。

真砂沢ロッジまでの歩きや剱沢雪渓の登りはタフなルート。しかもテント装備。かつ剱以降は、以前歩いたコースと重なる部分も。でも仲間や時間が変わればまた違う楽しさが。そこが山の魅力だ。3泊4日の行程を1日短縮して下山としたが、それを補って余りある歩きとなった。山ってほんといい。そして来年、会山行でやってみてもと。今回も一緒に歩いた仲間と山に感謝だ。



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