☆岩へのお誘い

岩場で怖い思いをしたのでもっと安心して通過したい、近場の岩場やクライミングジムでフリークライミングを楽しんでみたい、これからアルパインクライミングをやってみたい―など「岩」に関心がある方へ、会で行う学習山行やゲレンデ自主トレ、アルパインクライミングについて紹介します。

過去の岩山行の山行記はこちらをご覧ください。

1.学習山行

岩沢世話役会の学習山行には幕岩教室、沢教室、リードクライミング講習会、MRT、岩・沢でのセルフレスキュー訓練があります。詳細は各教室の欄を参照してください。

2.フリークライミング

フリークライミングは、使う道具はクライミングシューズだけで、その他はすべて安全確保のための道具です。岩だけを手がかりにして登り、登るために道具は使いません。乾いてしっかりした岩を対象に行います。

(1)3種類の登り方
①トップロープのクライミング

主に練習用に用いられるシステム。終了点にロープを掛けて、その一方をクライマーが結び、もう一方をビレイヤーが確保します。常に上から確保された状態なのでフォールを気にすることなく、登ることのみに集中できます。鷹取山三点支持や幕岩教室はすべてトップロープで練習します。

②リードクライミング
二人一組で行い、ビレイヤーがリーダーの登りに応じてロープを送り出したり取り込んだりして、フォールしたら確保器を使って、ロープをストップさせます。リーダーはプロテクションにクイックドローを使ってロープを通しながら登り、フォールした場合は一番近いプロテクションにぶら下がることになります。ビレイ技術もクライミング技術もかなりの経験を要します。
③ボルダリング

低い岩で飛び降りることが可能な場所で行うクライミングです。地面にマットを敷いて、登っていない人がスポッター(できる限り危険を軽減させる役)となることがあります。室内ジムでは一人で練習できるメリットがあります。

(2)会山行のゲレンデ自主トレーニング
幕岩教室修了者以上を対象とした山行とリード講習会やMRT修了者を対象とした山行が、月2回程度計画されています。岩場は、湯河原幕岩、広沢寺弁天岩、鷹取山、城山、三つ峠、つづら岩、越沢バットレスなどがあります。

幕岩での自主トレの様子

(3)フリークライミング愛好家について

クライミングは週1回の練習では現状維持、2回以上やらないと上達しないと言われています。クライミングの好きな方は、会山行とは別に毎週曜日を決めて定期的に練習しています。

・大鷹会=毎週火曜日に鷹取山南面で行われています。南面には8本ほどのルートがあります。垂直の壁なのでなかなか難しく5.11のルートもありますが、何回も挑戦しているうちに登れるようになります。無事故で10年ほど続いています。

・水曜サロン=毎週水曜日に主に鷹取山の学校フェースの壁で行われています。和やかな雰囲気の中でクライミングを楽しんでいます。初心者に登り方(ムーブ)を丁寧に指導しています。こちらも10年以上継続して無事故です。

・平日クラブ=毎週木曜日に毎回岩場を変えて、トップロープだけでなくリードやマルチピッチのクライミングの練習もしています。

・室内ジム=毎週平日の勤務終了後に集まり、クライミングジムで練習しています。

・クラッククライミングを中心に練習している集まりもあります。

・ガイド講習会=会員の中にはトップロープの講習会やリードの講習会に参加してレベルアップを図っている方もいます。

以上のように毎週どこかで50名以上の方がクライミングを楽しんでいます。

3.アルパインクライミング

フリークライミングに対して、山岳地帯で行われるクライミング全般をアルパインクライミングと呼んでいます。落石や雪崩の危険、濡れた岩場など自然条件の厳しい中で、どのように対処できるかを試されます。天候急変、ルートの見つけにくさなど、登る技術より経験を要することもあります。当会で毎年計画されている無雪期の主なアルパインクライミングについて紹介します。

(1)谷川岳一ノ倉沢南稜

一ノ倉沢などの谷川岳の岩場は、その険しさから剱岳・穂高岳とともに日本三大岩場の一つに数えられアルパインクライミングのメッカとされています。そのなかで最も人気が高いのが、入門ルートの烏帽子沢奥壁南稜です。一ノ倉沢出合から6月は雪渓を詰めてテールリッジ取り付きまで、テールリッジを登りきったところが衝立岩中央稜の取り付きで、そこからさらにトラバースして南稜テラスへ。南稜は一ノ倉沢のほぼ中央に位置するリッジのために周囲の展望もよく、岩も固く、落石の危険も少ない。ルートは6ピッチ、フェース、リッジ、チムニーと変化に富んでいます。終了点からは懸垂で下降ができますが、そのまま一ノ倉岳を目指し国境稜線へ抜けたほうが谷川岳の大きさを知ることができて充実感があります。

一ノ倉沢南稜

(2)滝谷ドーム中央稜

北穂高岳の西側に鋭く切れ落ちた岩場が滝谷。その中の登攀ルートの1本がドーム中央稜で、最も人気が高く、岩も比較的しっかりしています。一番の魅力は3000m雲上のアルプスでのクライミングが楽しめることです。当会では10年以上前から毎年山行が計画されています。ドーム中央稜へのアプローチは縦走路から第三尾根を経由して懸垂下降、バンドをトラバースして取り付きへ行きます。登攀ルートはクラック、チムニー、フェース、カンテ等、多彩で楽しめます。クライミング力としては、Ⅴ級をリードできることが必要です。また、上高地から北穂小屋まで15kg以上の荷物を背負って約8~9時間を登るので体力も必要です。

滝谷ドーム中央稜

(3)北岳バットレス第四尾根主稜

日本第2位の高峰、3193mの北岳東面に展開する約600mの高度差を誇る大岩壁バットレス。そのバットレスでもっともよく登られているのが、日本のクラシックルートを代表する1本の第四尾根。アルパインの入門ルートとして人気が高く、休日は取り付きで混みます。2010年の第四尾根枯れ木のテラスの崩壊後しばらく登られていませんでしたが、岩も安定したことにより会山行として2015年から再開しました。

大樺沢左俣の登山道からC沢とD沢の中間尾根から、落石の危険の少ない第五尾根支稜に取り付き下部岸壁を抜け、横断バンドをトラバースしてCガリーの右岸を登り取り付きへ。ルートは途中マッチ箱の頭で20m懸垂下降、9ピッチで終了点。そこからは踏みあとをたどり縦走路に出てすぐに北岳頂上に出ます。アルパインクライミングとして是非登ってみたい1本です。

北岳バットレス2ピッチ目

4.岩と安全

岩での事故を教訓にして、安全に登るためにどうしたら良いかまとめました。

(1)ビレイ技術

岩を安全に登るためには、安全確保技術とクライミング技術どちらも不可欠なものですが、先ずは安全確保技術を習得する必要があります。ビレイがしっかりできるようになってから引き受けてください。頼むほうもビレイができることを確認してから依頼すべきでしょう。

(2)リードクライミング

リードクライミングはクライマー、ビレイヤーともにかなりの経験を要します。トップロープでクライミングの基本技術を習得し、能力を高めてからリードの練習を始めるべきです。最初はトップロープで余裕をもって登れるルートから、リードクライミングの練習をしましょう。

(3)うっかりミス・不注意によるケガ

岩でのうっかりミス・不注意によるミスは、大きな事故になることがあります。
会では登り始めのとき、登攀中、ビレイ点、懸垂下降時に、自分の安全だけではなく相手の安全を確認する相互の安全確認を徹底するようにしています。

(4)アルパインクライミング

自然環境の厳しいアルパインクライミングにおいて、支点などは錆びたりして、安全が保障されたものではありません。常に叩いたり、引っ張ったりして大丈夫かどうか確認して、不安がある場合はハーケンを打ち直したり、別のものを使用したりする必要があります。

(5)自己責任について

クライミングは危険を伴うスポーツであり、完全な安全を求める人はクライミングを行うべきではありません。その危険性を承知した者だけが行うことのできる自己責任のスポーツです。
どこまでの危険性を受け入れるのか、トップロープまでのクライミングにとどめておくのか、リードやアルパインクライミングまで行うのかを仲間や指導者の意見もよく聞き、家族の同意を得て、最後は自己責任で決めるべきでしょう。

(6)もしもに備えて山岳保険

クライミングを行う場合は、賠償責任・捜索費用・救援費用が出る山岳保険に加入しましょう。jROは遭難のみに特化した保険なので、賠償責任のある保険に加入することも必要です。

 

岩にはいろいろな楽しみ方があります。近くにクライミングジムも増えてきました。スポーツとしてのクライミングを楽しんでみたい方や、登山道から離れ、いつかはバリエーションルートを登ってみたいと思っている方、岩沢の各教室に入会して岩を始めてみませんか。