初冬のまだ雪が来ない時期に山道を歩くときは、目を楽しませてくれるものがあまりありませんが、時々素晴らしいものに出会えることがあります。
茶色一色の枯草の中にひとつとして同じ形をしたものがない純白の何か。それが冬の華といわれる「シモバシラ」です。
一般にシモバシラというと、無数の細長い氷が密集して地表から数センチぐらい伸びあがっているものを想像しますが、ここでいうのはシソ科の宿根性の多年草。冬になって枯れた茎の表面からにじみ出た水分が冷たい外気に触れ、風に吹かれていろいろな形に凍ります。
植物の名前を「シモバシラ」と呼ぶのは、茎にできた氷の形が地面に出来た霜柱に似ているからだそうですが……。
冬の華「シモバシラ」ができるのは、茎が枯れても根は枯れずに水分を吸い上げている時期だけで、一
般的には12 月中旬から1 月上旬ぐらいまで。雨が降った翌日に晴れて気温が下がった午前中であまり気温が上がらないうちがチャンスです。
東京近郊では高尾山が有名で、5 号路の北斜面(もみじ台の北側巻き道)、稲荷山登り口付近などでよく見られます。手近なところでは、数は少しですが茅ヶ崎里山公園でも。そのほか東京・板橋区の赤塚植物園、秩父ミューズパークなどでも見られるそうです。
シモバシラを見つけたら、「あれはバレリーナが踊っているようだ」「これは綿菓子かソフトクリームみたいだ」などとイメージを膨らませながら歩くと楽しくなってきます。 (文責)3307