生涯登山を目指し、オールラウンドの山行を実施しています。

2020年5月号特集 「私の好きな山小屋」


 人里離れた自然のなかにポツンと立ち、登山客を迎え続けた小屋は、どこも個性的である。あなたの気に入った山小屋はどこですか? 情報誌3月号で企画・募集したところ、4名の方から寄稿がありましたので掲載させていただきます。

私のお気に入り「焼石岳金明水避難小屋」

 登山者の多い人気の山小屋は設備も良く食事もグレードアップされて快適さを増しているようですが、山の中ではそれほど御馳走を提供しなくても良いのではと思います。 最近は東北の山に登ることが多いのですが営業小屋はほとんど無く、いったん下山して麓の湯宿に泊るか避難小屋泊になります。

 東北の避難小屋は、建物は鉄筋造り、バイオトイレ、水場そばと避難小屋の概念が覆される所が多い。なかでも秋田駒ヶ岳の八合目避難小屋はJR田沢湖駅からバスで直接行き、荷をデポして秋田駒ヶ岳を一周、次の日は乳頭温泉などと夢のような山行ができます。

金明水避難小屋

金明水避難小屋

 一番のお気に入りは焼石岳金明水避難小屋。6月下旬の焼石岳は一面のお花畑。あちこちに残る可愛らしい雪形を眺めながら金明水へ。屋根が見えてからがかなり遠い。 しっかりとした小屋で、すぐそばの水場では清水がこんこんと湧いていて水汲みは楽です。

 次の日は夏油温泉へ向かいますがこの温泉もお気に入り。ただ数年前の大雪で温泉への橋が落ち今は通行できません。 避難小屋泊は当初からの計画に組み入れるべきではありませんが、営業小屋のない地域では常識的な人数での利用はやむをえないと思っています。

文責 2284 

 

主張を持った山小屋 「仙水小屋」(甲斐駒ケ岳)   

 仙水小屋は主張を持った山小屋です。南アルプス・北沢峠から長衛小屋を過ぎて仙水峠方面へ30分ほど歩くと、渓流を渡ってすぐの登山道わきにロープが張ってあり、「立ち入り禁止、(ただし)予約者はお入りください。この小屋には公衆トイレはありません」と書かれた札がかかっています。見事な排他精神に思わず唸ってしまいます。トイレぐらい使わせてくれても良いでしょうに!

仙水小屋

 これが仙水小屋の入り口です。相当偏屈な小屋主かと思ってしまいますが、話をするとそんなことは全くありません。普通の親切なおじさんです。過去によほど困ったことがあったに違いありません。北沢峠から小屋までの間、「事前予約が無いと泊まれません」といった趣旨の札がこれでもかというほど掛けてあります。とにかく完全予約制に拘っているのです。私のようにぎゅうぎゅう詰めだとよく眠れない人間には、とてもありがたい小屋です。

 8~9月の夏山シーズンだと、朝食は4時スタート。3時半には明かりが点いて否応なしに起こされます。仙水峠まで30分ぐらいなので、峠でご来光を見られるように時間を決めているそうです。更に駒ヶ岳に登り、午後1時半北沢峠発の甲府行きバスに余裕をもって乗るには、このくらいの時間が一番適切です。普通の小屋なら「弁当を用意しておくのでそれで済ませてください」となるところでしょう。この時間帯に温かいご飯を食べて出発できる、有り難い配慮です。

仙水小屋の夕食

 食事も素敵です。山の中で刺身が食べられるというのが評判ですが、それよりも、揚げたての天ぷらが食べられたのに感激しました。私が泊った時は10人程度しか客がいなかったので出来たことなのかもしれませんが、調理の時間配分を考えないと出来ないことです。決してボリュームたっぷりとは言えませんが、品数豊富な手料理の数々に小屋主さんの温もりを感じました。 料金は2食付きでなんと7,000円!(ただし2018年の夏)。驚きでした。

 宿泊棟は別棟になっていて2階建て、各階10畳くらいの大部屋になっています。宿泊客が多いときは本棟の食事スペースにも泊めるようです。食事スペースは、これも10畳くらいのコの字型の畳敷き。真ん中は土間になっていて石油ストーブが置いてあり、食後はこのストーブを囲んで団欒が出来ます。 トイレは外トイレのみ。渓流そばの小屋なので水は使い放題、便器には常に水が流れています。元祖水洗トイレです。臭気は全くありません。快適です。

 定員は30名と小ぢんまり。プレハブを思わせる、お世辞にも奇麗と言える小屋ではありません。宿泊棟の部屋の入り口の引き戸は立て付けが悪く、隙間風も多少入ってきました。乾燥室もないので、雨の日は濡れた雨具は部屋の中で乾かすことに。 北アルプスの豪華な小屋とは比ぶべくもありません。それでも、古い実家に帰った時のようにホッとするのです。ほかとはひと味違った雰囲気の、私には捨てがたい山小屋のひとつです。

                             文責 3331 

 

私の好きな山小屋「朝日小屋」

 会員の皆様にご紹介したい山小屋は、北アルプスの富山県側に位置する朝日小屋です。2019年8月、会山行で訪れました。 台風が近づいて催行が懸念されましたが、直前に進路が逸れて実施が決まりました。リーダーの方々はとても気を揉まれたことと思います。

 山行2日目、晴天。朝5時に糸魚川市の蓮華温泉ロッジを出発しました。朝日小屋までは8時間という長い行程です。歩き出しからいったん高度を下げ、そこから登り始めます。森を抜けて視界が開けると斜面にはたくさんの花々が。思わず声をあげてしまいました。

朝日小屋

 登山道を歩き続けて、一本道の先に見えてきた赤い屋根が朝日小屋。その姿はバテバテになっていた私を優しく迎えてくれました。畳の部屋に足を投げ出して辿ってきた道の長さを思い、歩き通せた嬉しさがこみ上げてきました。 夕食は評判の美味しい料理。昆布締めのお刺身、ホタルイカの沖漬け、薄味のおでん。脂っこいものが苦手な私には極上のおもてなし。何よりご飯がすごく美味しかったと記憶しています。

 実は登山道を歩いている途中でブヨに刺され、左瞼が腫れあがっていました。それを見た山小屋のオーナーが冷やすのが一番と保冷剤を貸してくださいました。溶けて効果がなくなり返しにいくと、また冷たいものを出してくれて、おかげで化膿することもなく徐々に腫れが引いていきました。オーナーの爽やかな笑顔はとても印象的でした。

 真夜中にコソコソと起き出して外に出てみました。満天の星空ではないものの、ヘッデンを頼りに椅子に腰かけて黒い山々を眺めました。風の音、吸い込まれそうな深い闇、平らなテン場に張られ色とりどりのテント、どこまでも続く一本道、この場所がとても好きだと感じました。

 朝食にも大満足して出発。今日も晴天。昼食は前日に山小屋で販売されていた、ます寿司とくるみの寿司。笹の葉に包まれた冷凍のものがお昼時に解凍されて食べ頃になります。私のお薦めはくるみとシイタケと干瓢の甘辛煮が載ったくるみの寿司。1つしか買わなかったことを後悔しました。

人気のお寿司

 白馬岳に向かう途中、振り返るたびに見える赤い屋根。ずいぶん長いこと見えていたように思います。最後に遥か彼方に見えた小さな赤い三角。鮮やかで凛として、深い緑の中に溶け込み、やがて消えていきました

                             文責 3523

 

私の坊ガツル賛歌「法華院温泉山荘」

 私のお薦めの山小屋は大分県九重にある法華院温泉山荘です。山小屋なのに個室があり食事が美味しい。そのうえ、お風呂があり温泉なのです。登山の人が泊まる場所なので山小屋でしょうが、秘境の温泉宿の風情も感じられます。

法華院温泉山荘

 登山口から2時間ほど登ると標高1300m地点に広大な原っぱが現れます。その原っぱはラムサール条約に登録されたタデ原湿原の「坊ガツル」です。法華院温泉山荘はその端に建っています。早めに到着して個室に入るとお気に入りの温泉タイムです。夏はサラサラさっぱりと、冬はホカホカほっこりと。ほどよくお腹がすいたところで美味しい夕食の時間です。時には経営者ご夫妻を交え楽しく和やかな時が流れます。

 そんな中、隣のテーブルから、「バカ尾根ですから……、膝をやられます」なんて話が聞こえてきます。あれと思ってスマホでバカ尾根を検索すると、大倉尾根の説明が出てきます。しばらく月例の事を忘れたい私としては九州に来てまで、かの山の話を聞くなんてと思った次第です。

 美味しい夕食と温泉効果は絶大で、夜はぐっすり熟睡し朝はスッキリ目覚めます。四面を山に囲まれて、さてどちらに行きましょうか。

 ピンクの絨毯を敷き詰めたようなミヤマキリシマの咲く頃は平治岳か大船山か三俣山もいいらしい。ちょっと足を延ばして白口岳、稲星山から久住山に登るのも楽しい。

 個性豊かな山々がコンパクトに連なっているのが九重の魅力なのでしょう。だから四季折々に何度でも行ってみたくなるのです。日帰りやテント泊でも温泉に入れますので、ぜひ体験して下さい。

                                文責 3560

 

 


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