谷川岳 一ノ倉沢烏帽子沢奥壁南稜

繰り返される懸垂

山行情報

日時:2024/05/31 ~ 2024/06/01 天候:晴れ
ランク:D-D-10:00 参加:5名
山行担当:CL3224 SL3537
記録担当:文責:3758 写真:3224, 3537, 3705, 3758

コースタイム

1日目
谷川山岳指導センター14:00…14:40一ノ倉沢出合…15:00雪渓取り付き…15:50谷川山岳指導センター 歩行時間:1時間50分

2日目
谷川山岳指導センター2:40…3:30一ノ倉沢出合3:50…4:30テールリッジ取り付き…5:30中央稜取り付き5:40…6:00南稜テラス6:20…10:10南稜終了点11:00…14:10中央稜取り付き14:20…15:20テールリッジ取り付き15:30…16:20一ノ倉沢出合…16:22谷川山岳指導センター 歩行時間:12時間15分

山行記

1日目

念願の谷川岳南稜。1週間ほど前から毎日、天気予報をチェックするたびに天候が悪化し、台風も発生する始末。「今年も雨で行けないかも……」と諦めかけた時、CLのSさんから決行のための数パターンの日程調整の提案をいただき、予備日に決行することが決定。東京駅で参加者と待ち合わせ、心躍らせながら谷川岳に向かった。

一ノ倉沢に行き、雪渓や渡渉場所を偵察。夕食時に登攀や懸垂の流れを確認し、次第に期待と緊張感が高まる。しかし、再び夕方から雨が降り出し、夜まで雨の音が続く。



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2日目

深夜2時30分ごろ、登山センターを出発。雨は止んでいるが、道路は濡れている。「ヤバい、絶対岩は濡れている。登れるのか」と緊張で口数が減る。すでに口はカラカラだ。

一ノ倉沢の出合に到着した。3時50分ごろ、出合を出発。夏路へ渡渉し、雪渓、濡れたテールリッジ、中央稜取り付きからのトラバースを慎重に登り進める。

南稜テラスに着くと、すでに2パーティが先行していた。準備をして、6時15分ごろにすぐ後ろに続く。意外と岩は乾いていた。CLのSさんのアドバイスを受けながら順調に登る。ついに、最終ピッチが見えてきた。「ん?岩が濡れて光っている!?」明け方までの雨で全てが濡れている。絶対に滑るコンディションだ。案の定、足が滑り、1ピン目で止まる。「怖すぎる……」。すぐに気を引き締め、気持ちを落ち着かせて離陸。頭をフル回転させてムーブを作り、恐怖に打ち勝ちトップアウト。

皆とトップアウトの達成感を共有したのも束の間、CLのSさんから「これからが本番」と言われ、11時ごろ、すぐに懸垂を開始。皆で協力しながら、懸垂→ロープの回収→ロープを送る→懸垂と、7回繰り返して、14時ごろに中央稜取り付きに到着。やっと着いた。長かった……。

しかし、まだテールリッジや雪渓の下りが残っている。気を抜けない。出合に着いたのは16時。皆と熱いハイタッチを交わす。アプローチ、登攀、懸垂で計14時間半だった。足が勝手に震えるほどに怖かった登攀を忘れてしまうほどの緊張感が続く懸垂・下山。これが谷川岳のアルパインだ。達成感が半端ない。

決行の判断、常に安全への細かい配慮をしてくださったCLのSさん、SLのYさん、本当にありがとうございました。また、岩にピンを打ち、回収しながらクライミングをしていた経験を話してくださったGさん、MRT同期のSさん、楽しい時間をありがとうございました。


【CL追記】

アタック日は雨の予想だった。前日は晴れの予想。また今年も天候に悩まされるのか、と駄目もとで前日開催を呼びかけるものの、足並みが揃わず断念。もう一つの希望である翌日開催に向けて天候や交通を確認していくと、開催の可能性が見えてきた。

当日は危険を感じた時点で撤退を覚悟していた。スムーズに山行を終え、一ノ倉沢出合に戻った時は心からほっとした。メンバーの協力あってこその成功だと思う。みんな山に熟練しており、チームワークも抜群だった。南稜登攀自体はさほど難しくはない。アプローチ、登攀、懸垂、下山すべてに難易度があるアルパインクライミングだからこそ、人々は魅了されるのだと思う。私にとっては恐らく最後となる南稜をCLで締めくくれてよかった。来年以降もぜひ受け継がれていくことを祈っている。



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