岩場のセルフレスキュー訓練2024
山行情報
日時:2024/12/01 天候:晴れランク:D-1:00 参加:51名
山行担当:CL3499 SL3224
記録担当:文責:3774, 3595, 3758, 3420 写真:3730, 3284, 3811, 3586
山行記
はじめに
みろく山の会では、岩場での万が一に備え、幕岩教室、MRT修了者または同等の技量を有する人を対象に、セルフレスキュー訓練を定期的に行っています。以下の山行記は、12月1日に神奈川県横須賀市の鷹取公園で行われた訓練の記録です。
【A班】宙吊りからの登り返し
セルフレスキュー訓練に参加するのは、今年で3回目となる。今回はA班の「登り返し」に参加。登り返しとは、オーバーハングなどで、セカンドで登攀中どうしても登れなかったり、墜落したりしたときや、懸垂下降中に登り返さなければならなくなったときの必須技術である。
今回のレスキュー訓練では、懸垂下降中のトラブルを想定したもので、いったんロープを仮固定し、スリングとカラビナを使って、登り返すシステムをつくる。ポイントは今どこに自分の重心がかかっているか、重心を移動するためにどこを操作するかを理解しながらやることだ。今回はSLとして参加するため、事前にジムでも練習した。当日の朝もトライしたが、やはり手順がスムーズにいかないこともあり、最低でも年に1回訓練する重要さを実感した。
午後からは、受講者が参加。A班は、今年、岩の登竜門である「幕岩教室」を出た初参加のメンバーも受講する。事前にテキストを見てきたものの、何をやっているのかさっぱりわからなかったという人も多かった。ただ、他の人がやるのを見るのも勉強になる。自分もエアーで手を動かしてシミュレーションし、実際に2回、登り返しにチャレンジすると、ほとんどの人が、感覚がわかってきたようだ。
他に、フリクションヒッチ用のロープスリングの太さや長さによって、操作のしやすさや効き具合が変わることなども学んでいた。今回、テキスト紙面ではわかりづらい手順は、リーダーが動画を準備してくれた。「一度実際にやってみると、動画で何をやっていたのかがよくわかるね」。予習だけでなく、復習として再確認できる。ビレイデバイスの種類によってロープがスムーズに流れる掛け方など、細かな点まで盛り込まれたテキストとなっている。毎年リーダーによって工夫されながらバージョンアップしてきており、みろくの学習体制の素晴らしさを改めて実感した。(文責:3774)
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【B班】ライジングシステム・支点ビレイのロック解除方法
今回学習するライジングシステムには1/3システムと1/5システムがあり、まずは1/3システムから。マルチピッチクライミングでフォローが負傷または核心を越えられないときに、ビレイヤーがクライマーを効率的に引き上げるための方法である。
ポイントは、カラビナを使用して方向転換し下に引っ張ると、摩擦のためかえって引き上げにくくなってしまうということ。方向転換しないで上に引っ張ったほうが持ち上げやすい。何人かは実際に両方実施し、違いを実感されていたようだ。方向転換する場合は、カラビナの代わりに滑車を使うと有効であるが、この場合はロープは1本しか使用できない、なども説明・実施した。ちなみに、1/5システムも試してみたが、効果と時間の都合により基本的に割愛とした。
次に、支点ビレイのロック解除方法。これは負傷したフォローを、安定した地上まで下ろすための方法である。まずはブレーキに使用されているカラビナを前後に動かす方法(通称キコキコ)。これは難なく実施できるが、動作に対する下降距離がほんのわずかであるため、長い距離を下ろすには、非常に労力と時間がかかってしまう。そこで、次にビレイ器のリリースホールにカラビナを引っかける方法を実施。これは力のかけ方によっては一気に落下してしまう恐れがあるため、慎重に実施する必要がある。いずれの方法も、操作する逆の手でロープをグリップビレイすることが重要である。
今回、自身としては2回目の岩場のセルフレスキュー参加であったが、各班の相互練習を体験したこともあり、2年前の1回目に比べ、多くのことを習得できた気がした。確かに、この2年間でそれなりに学んできた成果だとは思うが、それ以上に教える視点で学ぶということが、当たり前ながら改めて重要であることを実感できる機会だった。今後もいろいろなことに挑戦し、学び、いざというときの備えを身につけたい。(文責:3595)
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【C班】カウンタークライミングによる事故のリード者を下ろす
C班は、マルチピッチクライミングでリードが負傷した際の、負傷者救助の練習を行った。カウンタークライミング、登り返し、カウンターウェイト懸垂下降の一連の流れだ。
手順が複雑で、事前にテキストを読んでも、岩に取り付くと頭が真っ白になる。参加者から「あれ?あれ?」と困惑する声、手が止まり固まる姿があった。だからこそ、単純に流れで覚えるのではなく、一つ一つの手技の原理原則を理解していただくことを意識して確認・説明をした。参加者は、その複雑な手順に戸惑いながらも、真剣な眼差しで実施していた。(文責:3758)
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【D班】セルフレスキューに必要なロープワーク・一般登山のセルフレスキュー
一般参加者の3班、4班に12時20分から15時まで基本のロープワークと救助演習を行った。基本のロープワークでは、オーバーハンドノット、エイトノット、ダブルエイトノット、インラインエイトノット、クローブヒッチ、ムンターヒッチ、ミュールノット、(ブリッジ)プルージック、クレイムハイスト、マッシャー(オートブロック)、ガースヒッチ、ラウンドターン、ツーバイト、シートベンドを必死に実習。その後それらを駆使して、登山道から5~6m滑落した仲間を救助する演習を行った。
参加者は、基本のロープワークではただ手を動かすだけだったが、演習でそれぞれの結びの使い方を実習して、その意味や注意点などを実感していただけたと思う。家に帰るとほとんど忘れるので、時々訓練を思い出してロープに触っていただきたい。(文責:3420)
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【CL追記】
セルフレスキュー訓練参加の皆様、お疲れ様でした。年に一度の訓練とは言え、万一の場合の備えとしてとても大切な技術の一つです。岩場や沢等の山行は、一般登山道とは一味違った達成感や魅力を感じますが、より危険を伴うことも事実です。万一のアクシデントにも、冷静に対応できるようにしたいものです。訓練は年に1回ですが、ゲレンデやジムでの自主トレ時に、反復練習して身体で習得していきましょう。班長さんほか、お手伝いの方々、事前の練習や準備などお疲れ様でした。