中央分水嶺 高島トレイル(LT個人山行)

大御影山のブナ林に野営。熊出没注意!

山行情報

日時:2022/10/18 ~ 2022/10/20 天候:快晴
ランク:BーCー8:00 参加:6名
山行担当:CL2782 SL1890,3519
記録担当:文責:3483,3519 写真:3483

コースタイム

 

1日目:愛発越登山口~黒河峠(宿営地)(4時間10分+休憩10分)

2日目:黒河峠(宿営地)~大御影山手前(宿営地)(6時間40分+休憩1時間)

3日目:大御影山手前(宿営地)~水坂峠 (8時間40分+休憩10分)

 

コースマップ

 

山行記

【はじめに】 

世話役会ロングトレイルの2022年の山行計画に「中央分水嶺 高島トレイル」がリストアップされている。

高島トレイルは、日本列島を北から南に貫く中央分水嶺のほぼ中間部分、滋賀県高島市愛発越から同桑原橋に至る80kmの道で、高島トレイルクラブが設定した「12マウンティング」を越えていく。起伏のある道を登り開けた尾根に出ると前方に琵琶湖そして反対側遠くに日本海、若狭湾を望む絶景も味わえる。

登山道は、北陸へ向かう古い街道、近隣の集落を結ぶ生活道、古道を繋いだ道であり、自然保護の観点から避難小屋、テント場、トイレ(一箇所を除き)等の人造物はない。 

全長80kmのトレイルは平均的な登山者の1日6時間歩行で6~7日かかると言われている。途中、補水が難しい所もあり体力的な不安がある場合は行程を前半、後半に分けることもできる。 

今回の計画では当初7日間のスルーハイクとしたが参加者の体力、体調を考慮して、前半だけの個人山行とした。 

中央分水嶺と会活動を振り返ると2009年3月、中央分水嶺踏破を目指したシリーズ山行が同好者により計画され、「三国峠~石仏」を皮切りに、2014年5月「和田峠~塩尻峠」まで41回(敗退、中止を除く)実施されている。当時のメンバーによると一連の行程では、ヤブ漕ぎ、ルート捜し、水の確保に難儀したとのことだった。いずれにしても壮大なプロジェクトの一部を5年にわたり歩き繋いできたことに感服する。

今回の高島トレイルも、中央分水嶺ルートの一部であり、できる範囲で踏み後を残していくきっかけになればとの思いもある。 

1日目

京都駅経由、湖西線マキノ駅で下車。まず駅から数分の琵琶湖畔を散策。良い香りの方向に佃煮の看板。早速今晩のつまみとして仕入れる。今回のトレイルに山小屋、避難小屋はない。なお、キャンプ地は特に指定されておらず行程と水場からの自己判断となる。 

駅からタクシーで約20分愛発越(あらちごえ)登山口から入山。スキー場のゲレンデを上り詰めるといきなり急登の山道。ザックの重みが堪える。

90分の登りで乗鞍岳北尾根に出る。眼下には琵琶湖が広がり、竹生島も見える。日本海からの強風を感じながら、さらに40分で乗鞍岳に到着。

快適なブナ林の道、一方風雪に耐えた枝木が山道に覆いかぶさり頭上注意が多く背の高いザックが当たらないよう、いちいち腰を屈めなければならない面倒が。さらに日本海からの強風の中、電波塔を超えると約80分で芦原岳に到着。

日本海の眺望、反対側には琵琶湖も広がる。一休み後、急な下りを黒河(くろこ)峠に向かう。本日の野営地だ。行程中誰一人出会わなかったので、場所は風を避けられる平らな林道脇とした。しかし水場が見つからない。四方手分けして探した結果、林道を数分下った沢を発見。テント設営後、美味な鮎の佃煮のつまみにアルコールを少々、軽い食事後、まもなく眠りについた。 

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2日目

6:30宿営地の黒河峠を出発。天気は快晴、雲ひとつ見えない。

最初は三国山分岐まで1時間程度ひたすら登る。ここから緩やかな登りで明王ノ禿まで。禿(ハゲ)とはよく言ったもので、ピークには草木がひとつない何処からも目立つ場所である。左手には琵琶湖が望める。ここから待望の稜線歩きが始まる。

赤坂山を越え粟柄越から寒風までの間は草稜も多く歩きやすい。そのうえ眺望も抜群で左に琵琶湖、右には日本海が同時に望める。まさに高島トレイルの醍醐味を味わえる。寒風で目の前に琵琶湖を拝み大谷山へ向かう。

大谷山に向かう道はすすきで覆われ秋を実感する。大谷山から水場のある抜土に下る。水場を探しここにて大休止。ここから先には水場がないため2日目の夕食、3日目の朝食および3日目の行動水が必要になる。大量の水を背負い近江坂まで急坂を登る。一歩一歩ゆっくりと、肩にかかる重さが全然違う。

近江坂から大御影山へは緩やかな登りの見事なブナ林で山の雰囲気は最高である。地形図で大御影山手前のひょうたん型のエリアを宿営地に見定め、テントを張り、残ったアルコールをお腹の中へ。 

実は、ヤマレコ等の諸情報では大御影山手前エリアでの熊目撃情報がいくつかあり、タクシーの運転手からも熊が多くなっていると脅されていた。テントの中で眠ろうとするが、気になって眠れない。 

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3日目

今日も雲一つない快晴。琵琶湖の対岸から登る日の出が湖面を赤く染める。6:30野営地を出発。 

この地が熊の住処であることを伏せてくださったおかげで、私たちはブナ林に抱かれて何も知らずぐっすりと眠った。優しいご配慮に感謝。

ゆるやかに登ること20分足らずで大御影山山頂。反射板が立つ。ピークらしくない山頂で4等三角点あり。近江坂は古人が行きかった古道ということで、さぞかし歩きやすかろうと想像していたところ、道の中央は雨水でえぐられ、とても歩きにくい。

右手に若狭湾、左手に琵琶湖を眺め、ここが中央分水嶺であることを実感しながらブナ林を行くこと1時間強で近江坂と別れ、ルートを南に変える。このルートの最高地点である三重嶽(2等三角点あり)からは道跡不明な個所が多くなり地図読みしながら、高島トレイルの黄色テープを捜しながらアップダウンを繰りかえす。

左手、琵琶湖越しに伊吹山を、眼下にのどかな田園風景を見ながら進む。武奈ヶ嶽からはすべりやすいザレの下りや根が絡み合った急な下降があり注意を要する。やがて車の音が聞こえさらに10分程下ると鯖街道・水坂峠に降り立つ。おおよそ予定どおりの到着。待つこと数分でタクシーがやってきて今日の宿泊地くつき温泉へと向かう。 

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【総括】 

高島トレイル(前半)愛発越~水坂間38kmを10月20日、全員無事歩き通した。 この行程には「12マウンティング」の7岳が含まれた起伏のあるものだった。アップダウンを繰り返し、広い山頂に出た時の眺望は格別で都度大きな歓声が上がった。

長距離、起伏のあるテント山行で体力、持久力を維持するにはザックの軽量化が欠かせない。今回は共同装備を除き食料・水を含む装備は個人管理として極力不要な荷物の排除に腐心した。

ロングトレイル(歩く旅道)の目的は「歩きながら地域の自然、歴史、文化そして人に触れること」であり、今回は琵琶湖湖岸の散策、山々の向こうの日本海、若狭湾の眺望、ブナ林、イワウチワ、ススキなどの植生をゆっくり眺め、下山後の温泉と朽木地方の料理を楽しむことができた。

3日間の行程中は好天にも恵まれトレイルを全員満面の笑顔で終えることができた。