飯豊連峰全山縦走(ロングトレイル)
山行情報
日時:2022/09/14 ~ 2022/09/19 天候:晴れランク:C-C-9:30 参加:5名
山行担当:CL3452 SL3561,3198
記録担当:文責:3452、3561、3198、3550, 3710 写真:3452、3561、3198、3710
コースタイム
1日目:小白布沢(こしらぶざわ)登山口~本山小屋 (7時間50分)21,871歩
2日目:本山小屋~大日岳~梅花皮(かいらぎ)避難小屋 (9時間10分)32,061歩
3日目:梅花皮避難小屋~朳差岳(えぶりさしだけ)避難小屋 (6時間30分)23,935歩
4日目:朳差岳避難小屋~大石ダム (8時間20分)28,208歩
飯豊連峰全山縦走(前半部分)
山行記
1日目〈9月15日〉
前日、私たちは「民宿 村杉荘」で一夜を過ごし美味しい夕食に舌鼓をうった。女将さんの「今年一杯で、この宿も閉めるかも」という言葉に、何とか滑り込みで今年来られて良かったと思いながら。
朝、登山口まで送って貰う(これで、行程が50分程短縮される)。天気は晴れ。いよいよ飯豊全山縦走が始まる。飯豊の手拭をみても良くわからないほどの山の数だ。皆の顔が期待と緊張で高揚している。
いきなりの急登に、重い荷物が肩に食い込む。暫く行くと「地蔵水場」が現れる。それぞれ給水し一休み。今回のトレイルでは美味しい水に随分助けられた。噂の剣ケ峰が現れた。荷物が重いのでバランスに注意しながら三点支持で登る。厳しい道のりを登りきった稜線は見渡す限りの山々。東北の山は奥深いねと感動しながら。足元には「イワイチョウ」「マツムシソウ」などの可憐な花達が疲れを癒してくれる。
写真をとりつつ、三国小屋、切合小屋と進み、本山小屋に到着。「ビール売ってる!」「でも1,000円!」本山小屋展望台で、沈みゆく太陽と絶景を楽しみながらビールを味わい、小屋番さんや常連さんと山談義が弾んだ。(文責3561)
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2日目〈9月16日〉
本山小屋の正面に朝日が顔を出した。天空はオレンジ色に染まり、その下に雲海と山々の頂が現れた。世界が今まさに始まったかのような光景。「覆された宝石のような朝」という好きな詩の一節がKの口をついて出た。
小屋に隣接して建つ物置小屋のような建物は、その前に鳥居があることによって飯豊山神社とわかる。10畳くらいの部屋に祭壇が設えられている。明治初めの神仏分離以前は五社権現と称し、喜多方市山都町の麓宮と一体であった。前日、小屋に到着後水を汲みに行った水場近くに一ノ王子、この神社のある場所が四ノ王子、飯豊山山頂が五ノ王子で、かつては各王子の本地仏(いずれも虚空蔵菩薩坐像)を背負って登り、夏期の登拝期間中 各王子に安置したのである。
2,105mの飯豊山の頂に立つと、後ろから指している朝日が雲海に「影飯豊」をつくっている。わずかに虹も現われ、我々はブロッケン現象の幻に酔いしれた。
御西小屋に着き、重荷をデポして最高峰2,128mの大日岳へ向かった。明日誕生日を迎えると、Kと同い年になるというOの足も軽やかだ。「懺悔、懺悔、六根清浄」の山念仏を唱えながら山頂に到着。間もなく、本山小屋で缶ビールを飲んでいた喜多方のツーショットおじさんも到着。登頂の喜びを分かち合ってしばし談笑。先に御西小屋をめざして歩き始めた我々を、ツーショットおじさんは御西小屋で缶ビール片手に待っていた。そして2日前に買ったばかりというスマホを取り出して、いっしょに記念写真を撮ろうとせがむので何枚かポーズ。さらにおじさんはMとのツーショットを要求、自分の妻に見せて自慢したいらしいのだ。これもCLの任務かと、Mは持ち前の責任感から笑顔で応じたのであった。
飯豊の雄大な山なみはどこまでも続いている。その雄大さは北アルプスのような岩稜ではなく、また南アルプスのように樹林に覆われてもいない。見晴らしのきく笹原のうねりである。「風の谷のナウシカ」に登場する王蟲が、緑のマントを被って幾匹も横たわっているような感じだ。我々は王蟲たちの背中を延々と歩いていく。やはり爽快な気分なのかKMが叫んだ。「飯豊はいーでぇ」。丹沢・地獄棚での足つりのトラウマは、もうすっかり癒えたようだ。遠くにきょうの宿梅花皮小屋が見えた。白い壁の2階建て、黒い寄棟屋根を乗せた瀟洒な建物が稜線上にポンと置かれてある。アルプスの少女ハイジが飛び出してきそうだ。この小屋の近くに水場があり、豊富な水はバスタブに注がれ、缶ビールが何本も冷やされていた。(文責3550)
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3日目〈9月17日〉
北股岳の山肌が朝日に赤く染まる。今日も良い天気。昨日まで歩いてきた山並みは陽に輝いてビロードのように滑らかだ。今日は朳差岳を目指す。奥深い飯豊の懐に包まれて、思う存分歩かせてもらえる幸せを感じた一日だった。
幾つものピークを越えて9:50頼母木小屋に到着。驚くことに炊事場があり蛇口からは湧水が勢い良く流れ出ている。山の湧き水はどうしてこんなに美味しいのだろう。「頼母木は飯豊のオアシス」の木札を見て、ピッタリと皆で納得。汗だくで長時間歩いた我々にはまさにオアシスだった。アドベンチャー・レーサーの田中陽希がここでそうめんを作って食べたとか。「我々もそうめん山行やりましょう!」メンバーの一言で次の山行が決定。参加できなかった仲間と一緒に必ず実現しようと誓い合った。
ユニークな小屋のご主人に見送られて、明日の水と今夜のビールで重くなったザックを背負う。
穏やかな山並みが続く飯豊のみどりの縦走路は快適だ。越えていく山々の先に次の小屋が小さく見える。振り返ると飯豊本山がずっと我々を見守っていてくれる。空の色にも癒された。八ヶ岳ブルーは力強い青だが、ここの空は水色だ。優しく透き通った美しい空だった。
朳差避難小屋には13:00到着。山頂からの絶景を楽しんだ後、水場に降りて今夜の水を汲んでくる。おとぎの国にでも来たような三角屋根の可愛い小屋には先客が三人。夕暮れまでに人数は増えたが、我々は2階を広々とつかわせていただいた。この日誕生日を迎えたメンバーのためCLが準備してくれたのは蒸しケーキパーティーだ。BGM付きのろうそくを立て、ホカホカの蒸しケーキと頼母木ビールで楽しい一夜となった。明日は飯豊最後の一日。(文責3198)
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4日目〈9月18日〉
四日目、縦走最終日。前日までの疲れからか熟睡、メンバーの準備をする音で慌てて起床。食事を終え、予定した水分量を確認して早々に小屋を後にする。朳差岳に再登頂、今日も晴天だ。
頂上からは今まで歩いて来た飯豊の稜線の奥に雲を乗せた本山が見渡せる。朝日連峰の先には遠く鳥海山、月山を望むことができた。無事の下山を祈願し、名残惜しいが山頂を後にする。東北の山並と新潟の海を眺めながら快調に歩き出したが大石ダムまでは標高差1,500m、一筋縄ではいかない。
アップダウンを繰り返しながら、朝露に濡れて滑る道、ザレた道、転げ落ちる様な急坂、木の根との格闘。難路を一歩一歩ひたすら下っていく。ところが標高を下げるごとに気温が上がる風のない樹林帯、暑さと疲れで徐々に体力が奪われていく。水分も予想以上に消費した。小刻みに長めの休憩を取り、皆で力を合わせながら、ゆっくりだが着実に、無事下山することができた。
最高のチームワークと天候にも恵まれ、憧れの飯豊連峰全山縦走を達成できた経験は生涯忘れることはないだろう。メンバーに感謝するとともに、自分にとっても自信となる山行であった。遥かなるロングトレイルに乾杯! (文責3710)
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【CL追記】
「縦走」という言葉に弱い。飯豊の縦走をしないかと誘われ、よく考えもせずに引き受けた。3泊の小屋泊、行程の長さを知り青くなったが時すでに遅し。幸いにも昨年、一昨年と同コースの会山行が実施されていたので情報はたっぷりあった。水場が沢山あり重い荷物を担ぎ上げなくていいことが分かった。軽量化に努め、私達らしい飯豊にしよう!と皆で話し合った。
“百聞は一見に如かず” 飯豊の水は冷たくすっきりとした驚きの美味しさ。幾重にも重なる山並みは息をのむほど美しく、飯豊の空の優しいブルーは忘れられない。遠くに小さく見えた避難小屋を通り越し、振り返るとその避難小屋は小さな点になっていた。
天候に恵まれて、飯豊連峰の奥深い懐に抱かれた4日間。無事に終わった今「ありがとう」、感謝の言葉しか浮かんでこない。来年以降もこの素晴らしい飯豊連峰全山縦走が受け継がれていくことを切に願う。