南アルプス 荒川三山~赤石岳~聖岳縦走(ロングトレイル)

明石岳~聖岳へのたおやかな稜線をいく

山行情報

日時:2023/08/01 ~ 2023/08/05 天候:晴れ、午後2, 3時から雨
ランク:C-D-10.5 参加:5名
山行担当:CL3465 SL3060
記録担当:文責:3433, 3824, 3934 写真:3465, 3060, 3824, 3934

コースタイム

1日目:静岡駅~椹島ロッヂ
2日目:椹島ロッヂ〜千枚小屋(6時間10分)
3日目:千枚小屋…悪沢岳…荒川小屋…赤石岳…百間洞山の家(9時間40分)
4日目:百間洞山の家…大沢岳…兎岳…聖岳…聖平小屋(8時間50分)
5日目:聖平小屋…椹島ロッヂ…静岡駅(4時間50分)

コースマップ

記録日:2023/08/02~2023/08/05
合計距離: 46209 m
最高点の標高: 3151 m
最低点の標高: 1133 m

山行記

1日目(静岡駅~椹島ロッヂ)

南アルプスのこのコースに参加したく申し込みをした。入会して日が浅いため、会の山行歴が少なく、CLとのやりとりを重ねていたが、小屋の宿泊予約開始日に「百間洞山の家」が人数分の予約が取れず、この日をテント泊でも参加するか?!  という話に…。

きつい南アルプスの真夏に、1泊のためにテント装備を担いで40km歩けるのか??  高かったハードルがさらに上がった。その日からこまめに予約状況をチェックするものの空きは出ず…。今年テントデビューしたばかりの私は自信がなく、だんだん弱気に。運を天にまかせるしかなかったが、1週間前にCLから「百間洞山の家」の予約が取れたとの連絡! 万歳‼︎心配と不安が安堵に変わり出発の日を迎える。

静岡駅から畑薙夏期臨時駐車場まで3時間バスに揺られ、そこで東海フォレストの送迎バスに乗り換えて椹島ロッヂへ。ここで前泊。[文責:3934]



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2日目(椹島ロッヂ〜千枚小屋)

6時前椹島ロッヂを出発。いよいよ40kmの長旅の始まりだ。

樹林帯をひたすら登る。なかなかの急登。4時間ほど歩き見晴台に着くと展望が開け、荒川三山、小赤石岳がお目見えした。明日はあそこに登るのだ!とワクワクする。さらに1時間ほど進み、駒鳥池に立ち寄る。苔むした原生林の中にあり、幻想的な雰囲気である。横たわる木は自然に倒れたそうだが橋のように見える。千枚小屋までもう一息。

小屋に着いてしばらくしたら予想通りの雨。時おり激しく降り、翌朝の出発を早めることにする。

夕飯はこだわりのハンバーグ。とても美味しかった。夕食がすみ、雨が上がったあと富士山と虹が見えた。明日は長丁場。百間洞まで雨に降られないことを祈る。早めの出発がこの後、功を奏したようだ。[文責:3934]



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3日目(千枚小屋…悪沢岳…荒川小屋…赤石岳…百間洞山の家)

今日は、この山行中最も長いコースタイム10時間30分を歩くことになるため、小屋を4時30分に出発した。まだ薄暗い中、まずは千枚岳を目指して黙々と登る。ご来光が昇る瞬間は見えなかったが、頂上に着いた時は、雲一つない青空の中すっかり太陽が昇っていた。

ここから、いったん丸山を経て東岳(悪沢岳)には6時44分に登頂した。頂上からは、富士山、北アルプス、中央アルプス、八ヶ岳、これから行く南アルプスの山々が我々を魅了した。360度の絶景とはまさにこのことだ。

ザレ場のアップダウンを繰り返し、荒川中岳、荒川前岳を経て荒川小屋に到着。南アルプスの山小屋は、屋根が赤く壁が茶色に塗られているので、遠くから見ると新緑の中に映えて可愛く見える。

荒川小屋を出発して大聖寺平まではトラバース道で緩やかに標高を上げるが、ここから眼前に見える赤石岳は、巨大な要塞のようにも見える非常に大きな山だ。南アルプスは「深く・大きく・遠い」とよく形容されるが、その意味が身に染みて分かった。

「この山を登るのか? 俺に登れるのか?」と心の中で自問自答を繰り返していたが、11時50分に赤石岳に登頂することができた。頂上では雷鳥に出迎えられる嬉しいサプライズもあった。

赤石岳避難小屋で少し休憩。南側には聖岳、茶臼岳、上河内岳等の山々がそびえていた。20分程休んだ後、今度は下りに下って14時10分ようやく百間洞山の家に到着。疲れたー! 14時以降、降雨予報だったが雨に降られる前に到着することができた。ほっ!

夕食は、小屋名物の「トンカツ」で栄養補給し、明日の長い山行に備えて就寝に就いた。[文責:3433]



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4日目(百間洞山の家…大沢岳…兎岳…聖岳…聖平小屋)

4時起床、5時出発。朝食は小屋用意の3色弁当で、米の量がメチャ多かった。早朝の青空にはうっすらと高層雲がかかり、眼下の山には雲海がかかっていた。今日のハイライトは聖岳だが、朝日を浴びながらまずは大沢岳を目指す。大沢岳への登りには、一部ゴーロ、ガレ場が続く歩きにくい場所もあり、長丁場を前にじっくりペースで一日が始まる。

大沢岳の山頂からは、通過してきた赤石岳と荒川三山や、北方の甲斐駒ヶ岳、中央アルプス、北アルプスまでが一望できた。南方にはこれから行く聖岳が大きく迫り、その手前に中盛丸山。小兎岳、兎岳と小ピークの登り下りが繰り返しており、最後に400mの登りが待っている。やはり南アルプスの山は大きい。夏山のシーズン中なのに平日のためか、行き交うパーティはわずかだ。

中盛丸山よりトップがCLに代わり、なぜか歩行スピードが加速し、兎岳の登りで2パーティ追い越した。11時前に前聖岳に着いた。この頃にはガスが少し出て来て視界が悪くなってきたが、奥聖岳まで空身で往復した。正直なところ、標高3,000m近くの稜線の登り下りはけっこうきつい行程であった。聖岳から今日の泊地の聖平小屋までは、800mの長い下りである。とはいえ、14時には黄色が鮮やかなマルバタケブキの畑を通りぬけて、小屋に到着した。

聖平小屋では食事が出ない。自炊である。小屋の傍にテーブルとベンチの上にテントが張られていた。ここで夕食を摂っていたところ、16時頃から激しいスコールになった。同じベンチには千枚小屋から同じ行程を辿った2人が臨席しており、大雨の中であるが和やかな夕食で親交を深めることができた。[文責:3824]



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5日目(聖平小屋…聖岳登山口…椹島ロッヂ)

4日間はあっという間に過ぎ、いよいよ南アルプスとお別れの朝が来た。今日も快晴で、5時に出発した。椹島までは標高差約1,100mを下るのみだが、途中、橋や道が崩れていたり、歩きにくいガレ場が連続する場所もあり、距離も長い行程だった。

聖岳登山口から椹島までは約40分のロードで、ロッヂには午前10時に到着。ここでシャワーを浴びて4日間の汗を流し、着替えをして、ビールと美味しいカレーライスやソバを食べた。椹島からJR静岡駅までは、東海フォレストのバス(車中ではヘルメットを被るのだ)で畑薙第一ダムまで1時間、その後は静鉄バスで3時間を要し、椹島がいかに山奥深い場所であるかを改めて実感した。

4日間、足並みの揃ったパーティでスピーディに纏まって行動ができたと思う。同じコースを辿った他のパーティともいつしか顔見知りになり、天候も(14時以降は急変するが)最高であり、とても充実した山行であった。[文責:3824]



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CL総括

この山行は最初2019年に、以降毎年計画しながらも、天候不順、コロナ禍に見舞われ、ことごとく中止を余儀なくされてきたが、漸く今夏、5年ごしに実現することができた。期間中大気が不安定でスコールや雷情報もあったが、早めの出発、早めの到着の実践により、ほぼ晴天の下で、噂通りの奥深いたおやかな南アの山稜歩きを十二分に満喫できた。事前の丹沢主稜トレーニング山行の成果もあってか、参加者5名の足並みもそろい、総距離44㎞、累積標高差4,500mの長丁場を無事予定通り完歩でき、感無量の一言である。

余談だが、千枚小屋から同ルートを辿っていたご夫婦によると、あのシルバー族は団体(5名なのに南アルプスでは団体!)なのに何であんなに速いんだ! と行き合わせた登山者の間で話題になっていたとか…。